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2024.11.11

【クリニック開業を成功させる資金調達】融資の方法と効率的な資金管理とは?

クリニックを開業する際、多くの場合は融資が必要になります。しかし、どこから融資を受ければよいか迷われている先生もいらっしゃるでしょう。

本記事では、以下の内容を解説します。

  • クリニック開業に必要な資金の目安
  • 具体的な資金調達方法
  • 融資を受けるための準備
  • 効率的な資金管理のコツ

スムーズな資金調達の手助けとなる情報をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

クリニック開業に必要な資金の目安

クリニック開業には、一般的に2,000万円から1億円以上の資金が必要とされます。

しかし、以下のような条件で開業費用は大きく変動します。

  • 都市部か地方か?
  • 戸建てか、テナントか?
  • 診療科は?
  • クリニックの規模は?

開業資金の内訳

開業資金の内訳は、大きく分けて開業資金運転資金があります。一般的なクリニックの開業資金と費用の内訳をまとめました。条件によって費用は変動しますが、参考としてご覧ください。

【一般内科・40坪(家賃27万円)のテナントを借りて開業したケース】

費用内訳金額合計
開業資金物件取得費敷金(保証金)240万円400万円
礼金・仲介手数料80万円
準備期間の家賃80万円
設備費内装工事1,800万円3,600万円
診療設備1,500万円
什器設備300万円
開業準備費OA機器・システム140万円650万円
消耗品70万円
採用・研修費70万円
広告費130万円
医師会ほか会費150万円
備品費用90万円
運転資金固定費人件費約6か月分1,800万円
家賃・共益費
その他の経費
変動費変動費
合計6,450万円

※こちらのケースはあくまで一例です。費用は立地や条件で大きく異なりますので、参考としてご覧ください。

診療科目別の開業資金の目安

診療科目によって必要な設備や機器が異なるため、開業資金も変わります。一般的な開業費用は以下の通りです。

  • 内科:5,000〜8,000万円
  • 整形外科: 6,000〜100百万円
  • 皮膚科:4,000〜6,000万円
  • 歯科:5,000-8,000万円
  • 眼科:6,000〜7,500万円
  • 精神科・心療内科:1,500〜2,000万円

自己資金は1〜2割準備できると安心

開業にあたっては自己資金の準備も重要です。金融機関によっては、開業資金の1〜2割程度の自己資金があることが融資の条件となることもあります。具体的には、1,000万円以上の自己資金の準備をおすすめします。

クリニック開業で活用できる主な資金調達方法

クリニック開業時に活用できる資金調達方法を5つご紹介します。

  1. 日本政策金融公庫からの融資
  2. 医師会や地方自治体による融資制度
  3. 民間金融機関からの融資
  4. 福祉医療機構(WAM)からの融資
  5. 補助金・助成金の活用

1.日本政策金融公庫からの融資

日本政策金融公庫は、クリニック開業に特化した融資制度を提供しています。とくに人気なのが、最大7,200万円まで借りられる「新規開業資金」です。この融資制度は以下の特徴があります。

  • 融資限度額は、最大7,200万円(うち運転資金は最大4,800万円)
  • 返済期間は、設備資金は最長20年、運転資金は最長10年(据置期間: 最大2年間)
  • 比較的低金利で融資が受けられる

審査基準は比較的厳しく、事業計画の綿密さや返済能力の証明が求められます。また、融資が実行されるまでに、平均1か月程度かかるため、余裕を持って申請することが重要です。

【参考】日本政策金融公庫「新規開業資金」

2.医師会や地方自治体による融資制度

各都道府県の医師会では、医師信用組合と連携し、クリニックの開業を支援する開業支援ローンを提供しています。医師会に入会することが条件で、以下の資金を借り入れられます。

  • 診療所の取得資金
  • 設備資金
  • 運転資金
  • 医師会の入会費用

医師信用組合とは?

医師信用組合は、医師会の会員を対象に金融サービスを提供する協同組織の金融機関です。地域医療の充実を目的としているため、一般的に有利な条件が多いです。

地方自治体の制度融資

地方自治体も、金融機関や信用保証協会と連携し、中小企業向けの制度融資を提供しています。この制度では、以下のようなメリットがあります。

  • 金利優遇
  • 信用保証料の補助
  • 返済できない場合の保証を受けられる

制度融資を利用する際は、自治体と連携する金融機関を通じて申し込みます。

これらの融資制度には、融資額や利用条件に上限が設けられていたり、特定の診療科目や地域に限定されたりすることがあります。医師会と地方自治体の融資制度は、それぞれ異なりますので、開業予定地の医師信用組合や地方自治体に直接問い合わせましょう。

3.民間金融機関からの融資

民間の信用金庫や地方銀行も、クリニック開業向けの融資商品を提供しています。これらの金融機関では、地域の中小企業支援機関と連携し、ビジネスサポートや研修をおこなっている場合もあります。とくに地域密着型の診療をおこなう場合は、地元の企業や金融機関との関係を築いておくと、開業後の集患にも有利です。

民間金融機関の融資の特徴

  • 日本政策金融公庫と比べて、融資額が大きい
  • 審査が比較的迅速
  • 金利は日本政策金融公庫よりもやや高め
  • 担保や保証人が必要になる場合が多い

融資を検討する際のポイント

医療機関融資の実績が豊富な金融機関を選ぶことで、適切なアドバイスやサポートを受けられます。金利だけでなく、融資条件や審査スピード、開業後のサポートも考慮することが大切です。複数の金融機関に相談し、総合的に判断しましょう。

4. 福祉医療機構(WAM)からの融資

福祉医療機構(WAM)は、医療・福祉分野に特化した融資をおこなう独立行政法人です。医療貸付事業を通じてクリニック開業などをサポートしています。

医療貸付事業の特徴

  • 償還期間は最長20年で、長期的な返済が可能
  • 返済期間が10年を超える場合、完全固定金利制度か、10年ごとに金利を見直す制度のどちらかを選べる
  • 公的融資のため、年利0.9~2%程度と一般の金融機関よりも低金利で借り入れが可能

担保は、融資対象となる施設や事業運営に使用する土地や建物が求められます。保証人には個人の連帯保証人が必要ですが、貸付利率に一定の上乗せをすることで連帯保証人を不要とする制度もあります。

注意点

  • 融資内定前に工事請負契約や工事着工をおこなうと融資対象外となる。
  • 無床診療所は「診療所不足地域」に指定されたエリアでのみ融資を利用できる。
  • 申込みから融資実行まで最低3か月程度かかる。

福祉医療機構の融資を検討する場合は、計画を早めに立て、利用可能な条件を確認しましょう。

【参考】独立行政法人 福祉医療機構「医療貸付」

5.その他の資金調達方法

融資以外にも補助金、助成金を活用した資金調達方法があります。地域や診療科目によって、利用可能な補助金や助成金もあるため、積極的に情報収集しましょう。

創業補助金

創業者向けの補助金で、新しいビジネスの立ち上げを支援します。各都道府県ごとに異なる制度があります。

【参考】創業者向け補助金・給付金(都道府県別)

事業承継・引継ぎ補助金

経済産業省が提供する補助金で、事業の引き継ぎや承継をサポートするための資金を提供します。

【参考】経産省|事業承継・引継ぎ補助金

トライアル雇用助成金

厚生労働省の制度で、従業員を試用期間中に雇用する際に助成金が支給される制度です。雇用創出を支援します。

【参考】厚生労働省|トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

※制度によっては審査がおこなわれるため、必ず受給できるとは限りません。

融資を受けるための準備

審査通過の可能性を高めるための準備やポイントをまとめました。

融資審査のポイント

融資審査ではおもに、返済能力事業計画の妥当性担保や保証人の有無などが評価されます。返済能力については、過去の収入実績や将来の収入見込みが重要です。事業計画については、市場分析や収支計画、差別化戦略などが適切に立案されているかがポイントとなります。

また、担保や保証人の準備も重要です。不動産などの担保を用意できれば、有利な条件で融資を受けられる可能性が高まります。ただし、担保や保証人がなくても融資を受けられる制度もあるため、各金融機関の条件をよく確認しましょう。

説得力のある事業計画の立て方

説得力のある事業計画には、綿密な市場調査と競合分析が不可欠です。開業予定地域の人口動態や競合クリニックの状況、患者のニーズなどを詳細に分析し、自院の強みを明確にします。

収支計画の作成では、初期投資額や毎月の運営コスト、予想される患者数と診療収入などを具体的に算出します。患者数の見込みは慎重におこない、楽観的すぎる予測は避けましょう。治療法の専門化、予約システムの導入による待ち時間短縮など、自院の差別化戦略を明確に示すことで、事業の成功をアピールできます。

必要書類の準備

融資申請には、おもに以下の書類が必要です。とくに事業計画書は審査で重要なポイントとなるため、専門家のアドバイスを受けながら丁寧に作成しましょう。必要書類は金融機関ごとに異なるので、事前に確認し、漏れのないよう準備しましょう。

主な必要書類

  • 本人確認書類:免許証、印鑑証明書、医師免許証のコピー
  • 経歴書:医師としての経歴を記載した書類
  • 事業計画書:開業後の計画を詳細に記載
  • 物件の資料:土地や建物の概要がわかる資料、賃貸契約書または売買契約書のコピー
  • 設備投資の見積書:購入予定の医療機器や設備の見積もり
  • 資産状況がわかる資料:通帳、住宅ローン残高、資産・負債を示す書類

効率的な資金管理のコツ

クリニック開業後の安定した経営には、効率的な資金管理が不可欠です。ポイントをまとめました。

過剰投資の回避

クリニック開業時によくある失敗の一つが、過剰な設備投資です。最新鋭の医療機器を揃えることも大切ですが、初期段階では必要最小限の設備からスタートし、徐々に拡充していく方が賢明です。リースの活用も検討しましょう。医療機器のリースは初期投資を抑えられるだけでなく、機器の更新も容易になるメリットがあります。ただし、長期的にはリースより購入の方が安くなる場合もあるため、機器の種類や使用頻度によって判断することが大切です。

キャッシュフロー管理

開業後の安定経営には、適切なキャッシュフロー管理が欠かせません。収入と支出のバランスを常に把握し、資金繰りに困らないよう注意が必要です。とくに開業直後は患者数が安定しないため、余裕を持った資金計画が重要です。資金繰り表を作成し、定期的に更新しておくと、将来の資金不足を事前に予測し、対策を講じられます。急な出費に備えて、ある程度の予備資金を確保しておくことも大切です。

よくある質問(FAQ)

クリニック開業の融資についてよくある質問にお答えします。

Q融資の審査に落ちた場合の対処法は?

審査に落ちた理由を金融機関に確認し、事業計画の見直しや追加資料の提出をおこないます。また、ほかの金融機関や融資制度の利用も検討してください。

Q開業後の追加融資は可能か?

可能です。ただし、開業後の業績や返済状況によって審査基準が変わるため、日頃から適切な経営管理を心がけることが重要です。

Q複数の融資を組み合わせることは可能か?

可能です。日本政策金融公庫と民間金融機関の融資を併用するケースも多くあります。ただし、返済能力を超えた借入は避けるべきです。

プロのアドバイスで資金調達をスムーズに

クリニック開業の資金調達は、開業成功の重要な要素です。本記事で紹介した情報を参考に、最適な資金調達方法を選択し、慎重に準備を進めてください。必要に応じて専門家のアドバイスを受けることも成功への近道となるでしょう。

メディカルシップスでは、資金調達をスムーズに進めるためのサポートを提供しています。事業計画の策定から開業後の運営に至るまで、ワンストップで支援いたしますので、ぜひご相談ください。