2025.07.02

クリニック開業前に知っておきたい!内装工事の流れ・費用・ABC工事の基礎知識

クリニックを開業するうえで、内装工事は避けて通れないステップです。とはいえ、費用の配分や業者の選定、法規制への対応など、考慮すべきポイントは多岐にわたり、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、設計から施工までを一貫して対応する内装業者に依頼するケースを前提に、
内装工事の流れや費用相場、依頼時の注意点をわかりやすく解説します。

また、A工事・B工事・C工事の違いについても紹介し、トラブルを防ぐために知っておきたいポイントをまとめました。

 

クリニック内装工事の流れと費用の目安

クリニックの内装工事をスムーズに進めるには、全体の流れや必要な期間、費用の目安を事前に把握しておくことが大切です。ここでは、開業までの一般的なスケジュールと内装工事にかかる費用相場をご紹介します。

 

クリニック開業までの内装工事スケジュール

クリニックの内装工事は、「いつ・何を・どの順番で行うか」を理解しておくことが大切です。以下は、物件契約からオープンまでのスケジュール例です。

 

 

全体としては、開業まで約6〜8カ月程度を見込んでスケジュールを組むと安心です。特に気をつけたいのが、内装打合せが終わった後に行う工事内容の提出と承認手続きです。

これは、貸主(または管理会社)に対して、設計内容や工事の工程を事前に申請し、承認を得ることです。主に賃貸物件で開業する場合に必要な手続きで、提出書類や工事業者の確認、スケジュールの調整など、案外、時間と手間がかかります。

そのため、設計内容が確定したら、なるべく早く承認取得に向けた準備を始めましょう。

 

クリニック開業時の内装工事費用の目安

クリニックの内装工事費用は、診療科目や規模、導入機器、デザインなどによって大きく異なります。坪単価や総額の目安は以下の通りです。

【内装費用の相場】

  • 坪単価の目安:50〜100万円(標準的には約70万円/坪)※消費税(10%)が別途かかるため、支払総額にご注意ください。
  • 総額の目安:1,000〜5,000万円(例)30坪の物件:1,200〜2,200万円前後

 

【診療科目別の相場(例)】

※表は過去の開業事例をもとにした一般的な費用感です。実際の金額は物件条件や設計内容により異なります。近年は資材価格の高騰などもあるため、あくまで参考としてご覧ください。

 

【費用に含まれる主な項目】

  • 仮設・解体工事
  • 大工・建具工事
  • 電気・空調・給排水設備工事
  • 内装仕上げ
  • 受付・造作家具(待合ソファ、診察デスクなどの什器は別途)
  • 設計費 など

※防災・弱電(電話、インターネットの申込、LAN配線)・サイン工事などは別途費用となることも

【費用を左右する主なポイント】
内装工事費は、以下のような条件によって大きく変動します。

  • 高額医療機器の有無

CTやMRIなどの大型医療機器を導入する場合、設置スペースや電源・防音・耐震性などに配慮した特殊な施工が必要となり、工事費が高くなる傾向があります。

  • 物件の状態(スケルトン or 居抜き)

何もない状態から作り込むスケルトン物件では、基礎工事から始めるため費用が高くなります。一方、既存内装を一部活用できる居抜き物件では、コストを抑えられるケースもあります。

  • デザインや素材へのこだわり

内装のデザイン性や使用する建材・家具にこだわるほど、坪単価は上昇します。院内コンセプトやブランディングを重視する場合は、設計段階で予算とのバランスを確認しておくことが大切です。

【設計費の目安】
設計費は、工事費全体の10〜20%程度、または5〜8万円/坪が一般的な目安とされています。

内装工事費は変動要素が多いため、早い段階から複数社に相談し、設計内容と予算のバランスを検討することが重要です。

 

クリニック開業で内装工事を依頼する際に気をつけたいこと

 

 

クリニックの内装工事は、一般の店舗やオフィスとは異なり、医療特有の動線設計や法規制への対応が求められます。依頼先を決める際は、以下のポイントに注意しましょう。

 

医療施設の実績があるか?

患者とスタッフの動線や、医療機器の配置、バリアフリーへの配慮など、医療施設特有の設計に精通しているかが重要です。小児科ではキッズスペース、婦人科ではプライバシー確保など、診療科や患者層に応じた提案ができる業者を選びましょう。

法令・規制への対応力があるか?

医療法、建築基準法、消防法、バリアフリー法など、多くの法規制をクリアする必要があります。必要な届出や許可がスムーズに進むよう、法令対応に強い業者を選定しましょう。

アフターフォロー体制があるか?

開業後の不具合やトラブルに備え、メンテナンスや保証内容についてもあらかじめ確認しておくと安心です。

見積もりを依頼する際は、金額だけでなく内容や対応の丁寧さもあわせて確認しましょう。複数社を比較検討することで相場感がつかめ、判断しやすくなります。また、要望をきちんと汲み取り、わかりやすく説明・提案してくれる業者であれば、完成後のイメージのズレやトラブルも防ぎやすくなります。

 

A工事・B工事・C工事とは?

 

 

クリニックの内装工事では、A工事・B工事・C工事という3つの区分がよく使われます。
これは、「どの範囲の工事を、誰が費用を負担し、誰が業者を選ぶのか」によって分けられており、契約や費用、スケジュール管理に大きく関わるポイントです。

特にテナントで開業する場合、これらの工事区分を正しく理解しておくことで、余計な出費やトラブルを防ぎ、スムーズに内装工事を進められます。

以下では、それぞれの工事区分について具体的に解説します。

 

 

このように、工事区分によって業者の選び方も費用の負担者も変わります。次に、それぞれの工事がどのような内容なのか詳しく見ていきましょう。

 

A工事|ビルオーナー(貸主)が費用負担・管理する工事

A工事は、建物全体に関わる部分の工事です。 共用部や外壁、躯体など建物の資産価値や安全性に直結する工事で、発注・業者選定・費用負担のすべてをビルオーナー(貸主)が担います

【主な工事内容の例】

  • 外壁補修
  • 共用部の空調・照明・消防設備の更新
  • エレベーターの点検・交換
  • 共用トイレや廊下の改修 など

借主が直接関与することは少ないものの、工事の範囲やスケジュールを契約前に確認しておくことが重要です。共用部の仕上げや設備の仕様は開業後の導線や印象にも影響するため、事前にチェックし、気になる点は貸主に相談しましょう。
また、変更を希望する場合、その工事がB工事扱いとなり、費用が借主負担になるケースもあります。原状回復の範囲も含めて、工事区分を明確にしておくと安心です。

 

B工事|貸主指定の業者が施工、費用はテナント(借主)負担

B工事は、テナント専有部分に関わる工事のうち、建物全体の設備や安全性に影響を与えるものが対象です。

【主な工事内容の例】

  • 空調機の増設や移設
  • 分電盤や電気配線の追加
  • スプリンクラーや火災報知器の設置・移設
  • 給排水設備の新設・変更 など

B工事は、費用を借主が負担するにもかかわらず、貸主が指定した業者によって施工されるため、トラブルが起こりやすい工事です。業者選定の自由がないことから相場より高額になるケースもあるため、契約前に工事内容や費用の内訳をしっかり確認しましょう。

また、工期が他のテナント工事と重なると、着工・完了が遅れる恐れがあります。スケジュールは余裕をもたせておきましょう。設置した設備の所有権や原状回復の範囲も事前に確認しておくと安心です。

 

C工事|テナント(借主)が施工業者を指定・費用を負担する工事

C工事は、テナントの専有部内で完結する内装や設備に関する工事です。

【主な工事内容の例】

  • 間仕切り(パーティション)設置
  • 壁紙や床・天井の仕上げ
  • 什器(家具)や照明器具の設置
  • LAN配線やコンセントの増設 など

自由度が高いC工事ですが、その分すべて借主側の責任で進めなければなりません。ビルごとに定められた工事規定や申請手続きがあるため、着工前に必ず貸主や管理会社に確認し、承認を得ることが大切です。

また、工事の品質や進行の管理も借主の役割となるため、信頼できる施工業者を選定し、工事後の検収も怠らないようにしましょう。

 

まとめ|内装工事をスムーズに進めるために

 

 

クリニックの内装工事は、スケジュールの管理や業者選定、契約内容の確認など、さまざま対応が求められます。加えて、A工事・B工事・C工事の理解や、法規制といった専門的な知識も必要です。

しかし、開業準備の忙しいなかで、すべてを先生ご自身で把握・対応するのは大きな負担にもなりかねません。

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